日本の労働生産性は低いと言われて久しいですが、生産性=効率と考えると大きな間違いと、藻谷さんが言われています。労働生産性は労働者一人が生み出した付加価値ですから、確かに一人の人が効率良く仕事ができるようになれば、生産性は上がるような気がします。
しかし、今の日本で起きていることは、付加価値の絶対額が下がっているということのほうが問題のようです。
例えば、昔は電子レンジは当時の価格でも10万円くらいしました。今では当時の機能なら1万円以下で買えます。全体の付加価値が大きく下がってきているわけです。当時の10万円は今の仮に30万円(給与が3倍になっているとして)とすると、付加価値は1/30に下がっていることになります。このような状態で、生産効率を30倍にしても、やっと当時と同じということになります。製造原価を考えると、効率を40倍くらいにしないと無理ですね。40倍にしようとすると、それにかかわる工場労働者も増えるはずですから、実は一人当たりの生産効率はそんなに上がらないはずです。日本人の効率は上がっているかもしれませんが、海外工場で労力が増えているはずです。
多くの日本企業は少ない人数で生産効率を上げて、良いものを安く作れば儲かると思って、ほとんど宗教のようにこれに注力してきました。例えば三洋電機は一生懸命白モノ家電を作り、売上は膨大な金額となっても、営業利益はほんのチョット。実は赤字という状態を続けていたのだと思います。(三洋電機関係者の方ごめんなさい。ただ、典型的な例だと思うので勘弁してください。)
本当は電子レンジの生産は発売後10年くらいで止めて、別の事業に移らなければならないところを止められなかったのだと思います。たぶん、真相は止める気もなかったのかもしれません。でも、ほとんど全部の日本企業がそうでした。
本来、労働生産性を上げるためには、付加価値を最大限に増やすことが重要で、そこが多くの日本企業では出来ていなかったのではと思います。
シャープのヘルシオとか、高く売れているじゃないかと、お叱りもあるかと思いますが、電子レンジが出たころ、サラリーマンの給与と同じかもっと高い値で売れていました。そう考えると、ヘルシオでもたかだか、給料の1/3くらいでしかないことを考えると、もっと付加価値の高い事業に同じエンジニアの能力を振り分けるべきだったのではと思います。
これが、エンジニアの浪費です。
とは、言っても、付加価値をそれだけとれる事業を見つけるのは大変です。そのための技術開発も膨大な投資がかかるかもしれません。能力の足らないエンジニアは退職してもらわなければならないかもしれません。
アメリカのエンジニアは良く勉強します。私も夜、カリフォルニア大学の技術講座に通っていましたが、たくさんのエンジニアが仕事が終わったあと、勉強していました。日本の場合は、エンジニアは毎日残業でヘトヘトで、勉強する気力も機会もありませんでした。これでは、電子レンジや炊飯器しか作れないエンジニアが増産されてもおかしくありません。これは不幸なことです。
(念のため、ヘルシアを開発したエンジニアはすごいですよ。尊敬します。でも、もっと付加価値の高いフィールドを与えてあげられなかったのでしょうか。。。。経営者の怠慢です。)
現在の日本の技術立国の凋落は企業がエンジニアを再生していなかったことと、その事業分野で付加価値の大幅低下が起こっているにも関わらず、生産効率向上にばかり邁進していた結果だと思います。
付加価値を上げるにはどうするべきか。日本の技術蓄積があればできます。
みんな、元気を出して頑張りましょう。
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