2012年8月11日土曜日

8月6日、9日を思う

今年も8月6日と9日の原爆の日がやってきた。
それにしても思うのは、NHK以外の民放ではほとんどこの話題が取り上げられなくなってきていることだ。今年はオリンピックの影響があるのはわかるが、あまりにも無関心になってきているのではないだろうか。

福島の子供たちに自分の若かれし頃を重ねている広島、長崎の人も多いのではと思う。
「お嫁に行けないのではないかしら。」
福島原発の事故で、放射線を浴びた年頃の娘さんたちのことを考えると、胸が痛む。
もちろん、少々、放射線を浴びたくらいで問題が起こるわけはないのだが、風評のほうが怖い。

政府は徹底して、子供たちの健康診断、情報開示、子供たちの安全を考えてもらいたい。

こんな悲劇を起こしても、まだ、将来的にも原発を推進しようとしている連中が強大な力を持っている現状は、問題だと思う。事態は原発の安全性というよりも、電力会社の経営問題に変わってきている様相を呈している。廃炉費用、将来のリスク引き当てを計算すると、現存する電力会社はDCFで考えれば破たんしていることになってしまうからだ。

短期的には原発稼働も致し方ないが、将来的には再生可能エネルギーにシフトしていくべきだろう。また、今回の事故で広く知られるようになったが、原子力の場合、廃炉にするにも、放射線があると、近づくこともできない。使ったあとの燃料も処分が並大抵ではない、経費や危険が伴う。有事の場合、原発をミサイルで狙われるという危険もある。包括的に評価しなおす時期に来ているのは間違いない。


このまま技術の高度化が進み、バッテリーが高性能化され、太陽光パネルが安価、高性能になれば、各戸で発電すれば、その家庭で使う電気は賄えるようになるだろう。電力会社の電気代が上がってもなんら、関係がなくなるだろう。電気も直流で動作する家電ができてくれば、効率も飛躍的に向上するだろうし、家で使う家電なんて、しょせん、冷蔵庫、レンジ、テレビ、洗濯機、電燈、クーラーくらいだ。たかが知れている。

今の現在を是とするのではなく、将来環境を予測したうえ、Goalを見据えたビジョンが必要だと思う。

2012年8月5日日曜日

オリンピック柔道に思う

柔道は日本のお家芸である。お家芸だから強くて当たり前。金以外は負け。
こんなに、優秀な指導者がそろって、みんな精進しているんだから、負けるはずがない。

まるで、どこかの家電メーカーのようでもある。
日本の技術は最高である。ちょっとやそっとで、中国や韓国にまねができるものではない。
こういっていた10年前。なにも手を打たずに自社の技術開発にのみ邁進していた。
つまり、日本のお家芸の中で技を磨いていたのである。

実は、オリンピックで負けているのは日本選手団がけっして弱くなったわけではないと思う。年々技は向上していたのではないだろうか。実は海外選手がそれ以上に強くなっていると見るほうが自然だろう。

技術についても同じだ。日本人が思っている以上に海外のエンジニアの技術レベルが上がっている。技術の場合、それだけではなく、日本の技術者の劣化が始まっている。

最近取引先の海外の技術者と日本の技術者とも付き合う機会が多くある。
あきらかにITの世界では日本の技術の裾野が劣化している。プログラム開発のできない、IT技術者、設計のできないSE。ひどいものである。さらに日本のSEの多くはコンピュータサイエンスを専攻していない素人がOJTで勉強してきたというケースが多い。基礎を勉強していない人が現場の技術だけやっても、理解が浅くなってしまう。当然、高度な設計はおぼつかない。

私は今朝、香港から帰国してきたばかりだが、香港のIT技術者のレベルも非常に高い。英語を読めるから、すぐに最新のIT技術を実務に応用することができる。
正直、今回の出張ではこの技術者個人の技術力の差に愕然とした。

日本が強いと思っているものづくりは実は弱い。
確信を持って帰ることになってしまった。

技術情報漏洩事件に思うこと

最近、日本の技術に諸外国が簡単にキャッチアップしてきている。退職した技術者が韓国、中国メーカーに再就職し、そこから技術情報が漏れるということによるらしい。

そもそも、採用した会社がその人の技術力を利用しようとするとすることは、たとえばシリコンバレーでは当たり前であるし、それを防ぐことは非常に難しい。
そもそも、転職しようとする人にはそれ相応の理由があるし、まして定年した技術者にとっては、新たな活躍の場を用意してくれるというのは魅力的だ。
自分たちの勝手で年齢が60になったからという理由だけでやめさせたことを棚上げにして、わが社の重要な技術を流したと技術者を目の仇にするだけでよいのだろうか。
ましてや、抑制効果を狙って、告訴下などというのは本末転倒である。

まず、秘密、門外不出の秘伝情報というのなら、そういう情報管理が必要である。
重要情報を重要なものとして扱っていない、管理していなくて、わが社の大切な情報が漏れたと大騒ぎをする。当然、技術者の頭に入っている情報が重要なのなら、その情報が入っている箱である従業員を大切に扱わなければならないはずである。
60を超えたから嘱託社員で月給15万円です。
技術者は工場労働者との兼ね合いがあり、初任給は18万円です。どんなにがんばった技術者も35歳なら年収600万円が上限です。ではあまりにも引きとめの誘引にはならない。

競争の源泉となる知識労働者を社内に引き止めておくことこそ、もっともメーカーにとって重要な戦略の一つなのではないのか。

技術者は給料のためだけに働いているのではない。自分の開発した技術が製品になり、世の中に無い新しい価値を生み出すことに価値を置いている人は多い。
アメリカでもそうだった。あたらしい技術にチャレンジできるということが非常に重要な誘引になっていた。

私が最初の会社を辞めたときも同じだった。新しい技術をアメリカで開発するために5年間、アメリカで必死にがんばったプロジェクトを本気で継続する気が経営陣にないことがわかったらである。
ちょうどその時、活躍の場を与えられればそれを断るのは難しいことは経験しなくてもわかると思う。

技術者の扱いには戦略が必要である。いままでそれを終身雇用をたてに、無視し続けていたメーカーのつけは回ってきただけと見るのは私だけだろうか。